外付けハードディスクが昇天した。
過去10年間の仕事のすべてを抱えたまま、雲のかなたへと散っていった。
ああ、私のデーターたちよ。
先日から何かが、「ギーコギーコ」鳴っていると思っていた。電子機器に囲まれている私は、それが何の音かを突き止めることができぬまま、その日を迎えた。
「ギーコギーコ」は外付けハードディスクの末期の叫びだったのだと気がついたのは、そう、すべてのデータにアクセスできなくなってからだった。
「ああ」
以前の私だったら、それが、ハードディスクの末期音であることくらい簡単に気づいていた。
でも最近は、「こわれる」なんてことは想定すらしなくなっているほど、電子機器の性能を信頼しきっていた。
「ああ、気がついてあげられなくてゴメンネ」
なんて、感傷にしたっている暇はない。
すべての締め切りは、「今日!」なのだから。
3媒体同時進行、同時入稿、夜もまともに寝ず、好きなお酒も断ち、家族との会話も無く、今日の入稿にばく進していた。
そのデータはどうするんだ!!
焦るな、焦るな。道はあるはず。
購入したショップに電話をするも、「ああ、そりゃダメですね。バックアップ、とってなかったんすか~」。バックアップとってたら、「悲壮感 悲壮感」100%で電話するわけないやろ!!
続いて友人。「ははは、あきらめなはれ」。あきらめられるわけ、ないやろ!
「神様は、必ず、乗り越えることのできる道を用意して試練をお与えになる」って、先日取材した人が言ってたゾ。乗り越えることのできる道はどこだ。。。。
「そうだ、こんな、哀しいことがおこったのだから、幸せも100倍かもしれない」と、勝手な解釈をした私、突然、東京の大手出版社に電話をしてみた。
「あのー、私、明石で編集コンサルしているマスダといいますが、本の出版企画を見ていただきたいんですが」
いきなりの電話である。こちらには、なんか変な自信があった。だって、ハードディスクがこわれたんやでえ。これ以上の不幸はないやろ。。。
一般的には、「申し訳ございません。持ち込み企画の受け入れはしておりません」だ。
かわって出てきた電話口の男性。
「ぜひいらしてください。金曜日ですか、ちょうど、担当者もいますから」
ひえ~~。突撃アポOKだ。こんなことってあるんだ。るんるん。。。。
だけど、冷静になってみると、私が書き上げた出版企画も、200ページに上る記事内容も、いまは、ない。空の彼方へ、バラバラになって消えていったんだ。現実。。。しょぼん、
そして、どうする、飯の種。本日入稿の媒体は。
つづく。。。
こら、続いている間ないやろ。
というわけで、とりあえず、ググる。
以前、デジカメのデータを取り戻したこともある。
そうだ、こういうときは、ソフトがあるはずやン。
ベクターで検索。
「データ 復元」
あるある。なあんや、めっちゃあるやん。
その中から、「完全データ復元PRO2008]をダウンロード。
早速使ってみる。
これまで全く認識しなかった外付けハードディスクが、なぜか動き出す。
すなおに、動き出す。
なんでえ、なんでえ。なんでもいい、PCの前で祈りを捧げる。「あれと、これと、今必要なデータだけは戻ってきますように」
最終処理までは、3時間ほどかかる。その間に、会議に出かける。
「なんか、元気ないですねえ、マスダさん」
「はあ」
そりゃそうだ。家では、PCが緊急手術中。生き返るかどうかは、まったくわからんのだから。。。
3時間ほどの会議を終えて、そろっと、パソコン前に。処理は終わっている。そーと、動かしてみる。
「おおおお」
あるじゃん、あるじゃん。もどってきたやん、雲の彼方から。みんな、どこへいってたん。
一つずつ、一つずつ、確認していく。そーと、アプリケーションを立ち上げてみる。
そして、今日入稿のデータをおそるおそる。
1件目、おお。もどった。
2件目、あったあ。
そして、一番大変な3件目。。。。
データはそろっている。さあ、アプリケーションを立ち上げるぞ。。。。。
んん?
そこには無情なメッセージ。「重大なエラーによって、、、」
そんなに世の中は甘くなかった。
全8ページの、びくりするくらい、文字量が多く、デザインびしばしの媒体、、死。
意識戻らず。
さあ、ここからは大変だった。ひたすら、「打つべし、打つべし、打つべし」
残っていた「校了」誌をもとに、ひたすらキーボードを打ち続けた。そして、仕上げた。お客さんにも全面協力してもらい、できたページから校正をあげていく。
そして、無事入稿。
印刷所の方が、「データを復旧させるマスダさんにも驚きだけど、これを手打ちで半日で仕上げる根性もすごい」。
ほめてもらっても、やっぱり泣きたくなる。
バックアップは、きちんととりましょう。
明日は久しぶりの東京。花のお江戸で修行してきます。出版企画も生きかえったことだし。